『坂の上の雲』と司馬史観

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史実と小説の微妙な関係を歴史学の光で照らし出す 司馬遼太郎の人気作品をどう読むか?

著者からのメッセージ

中村政則
  司馬太郎の日本近現代史理解の最大の問題点は,「明るい明治」と「暗い昭和」の二項対立である.司馬は明治維新 から日清・日露戦争までは良かったが,日露戦争後から日本は坂をころげ落ちるように,1930年代の戦争の時代へと突き進み,遂に自滅した(敗戦)とい う.本当にそうだろうか.司馬の日清・日露戦争観,歴史と文学,大正史(第一次世界大戦史)の欠落など,司馬史観の特徴を根底から論じてみた.また 1980年代以降の日本近代史研究の歩みを丁寧に追い,司馬の知らなかった様々な史実を明らかにした.


著者略歴

中 村政則(なかむら まさのり)
1935 年,東京に生まれる.一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了.一橋大学経済学部教授,神奈川大学特任教授などを経て,現在,一橋大学名誉教授(日本近現 代史専攻).著書に『近代日本地主制史研究』(東京大学出版会),『昭和の恐慌』(小学館),『戦後史と象徴天皇』(岩波書店),『近現代史をどう見るか ―司馬史観を問う』(岩波ブックレット),『現代史を学ぶ』(吉川弘文館),『戦後史』(岩波新書),『昭和の記憶を掘り起こす』(小学館)ほか.訳書に 『ビッソン 日本占領回想記』(共訳,三省堂),アンドルー・ゴードン編『歴史としての戦後日本』(監訳,みすず書房)ほか.


目次

第 1章 『坂の上の雲』とは何か

はじめに
第1節 日清戦争と台湾・朝鮮
第2節 日露戦争への道程
第3節 日露戦争――旅順攻略戦
第4節 日露戦争――日本海海戦
第5節 韓国併合――日露戦争の帰結
第2章 青春物語としての『坂の上の雲』
は じめに
第1節 秋山好古と陸戦
第2節 秋山真之と日本海海戦
第3節 正岡子規――壮絶なる闘病生活
第3章 近現代史をどう見るか
第1節 なぜ,司馬史観を問うのか
第2節 明治維新の世界史的位置
第3節 日清・日露戦争をどう見るか
第4節 大正デモクラシーの歴史的意義
第5節 大東亜戦争とアジア太平洋戦争
第6節 司馬太郎の明治憲法・天皇観
あとがき
引 用・参考文献
装 丁=桂川潤

 

 

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